発想と交流を生む空間デザイン──医療現場の新しい休憩室のかたち
今回新設されたスタッフ専用休憩室は、発想や交流が自然に生まれる空間としてデザイン・設計されています。
あえて部屋数を最小限に抑え、天井の高さを活かした設計を採用。昭和初期の建物基準である高い天井をそのまま活かすことで、「天井の高さ=発想の広がり」という開放感のある空間になっています。
スタッフ一人ひとりが、自由に着想や想像を巡らすことができるような、柔軟な発想が促される設計です。
また「働くお母さんたち」をサポートする空間づくりも考慮されており、特に小さな子供がいるスタッフが安心して働けるよう、1階部分を最大限に活用し、業務スペースと子どもたちがくつろいで遊べるエリアを両立させた設計になっています。
色合いは、クリニックのブランドガイドに基づいた柔らかなピンクを基調に、やさしいブルーやグリーンをアクセントに取り入れ、明るくナチュラルな雰囲気に仕上げています。
管理職用のスペースも設けつつ、すべてのスタッフが心地よく過ごせる、インクルーシブな環境が意識されています。
また、各エリアにはそれぞれの役割に合わせたテーマカラーが設定されています。
・執務室には、業務に集中できるよう落ち着きのあるシックなトーンを採用。
・子ども預かり所には、洗練された雰囲気の中に、子どもらしい可愛らしさを感じられる配色に。
・クリニックのブランドカラーであり、母性を象徴するピンクは、最も目立つエリアに配置。
そして今回の大きなポイントは、これまで存在しなかった休憩スペースを新たに創出したこと。
同ビルの1階部分に、約100㎡の広さを誇るスタッフ専用休憩室が新設されました。
こうした空間づくりを手がけたのは、多くの施設のブランディングにも携わる空間デザイナーのクリス・ガーニー氏。ただの内装設計ではなく、組織の理念や想いを空間として可視化することを得意としています。
現場の声:“患者ファースト”を支える、“働き手ファースト”という視点
【スタッフコメント|人事総務部長・高橋宏美さん】
当院は「待ち時間の少なさ」でも高いご評価をいただいています。これは、院長が独自に構築した診療フローに基づき、各部署が緻密に連携して動く体制があるからこそ実現できているものです。しかしその一方で、スタッフは常に集中力を要する業務に追われ、部署間の交流や情報共有が限られている現状がありました。
そうした中で開設されたのが、今回のレクリエーションルーム(休憩室)です。この空間は、スタッフが部署の垣根を越えて顔を合わせ、食事を共にし、会話を交わす「交流のハブ」として機能しています。勤務時間中には得られなかった雑談やちょっとした気づきの共有が、チーム全体の視野を広げ、自然と職場の一体感を高めてくれています。
また、福利厚生として導入された「チケットレストラン」により、栄養バランスの取れた食事をとることができ、体力・気力の回復にもつながっています。これは結果として、患者さまへの丁寧な接遇や診療の質にも良い影響を与えています。
さらに、部門長制度の導入により現場の意思決定のスピードが上がり、責任の所在が明確になったことで、スタッフがより主体的に動けるようになりました。今では部署間の垣根が低くなり、共同プロジェクトが生まれるなど、チーム医療の深化が着実に進んでいます。
私たちは、迅速で質の高い医療を提供し続けるためにも、スタッフ一人ひとりが「自分の業務」だけでなく、「クリニック全体」を見渡す力を養っていくことが大切だと考えています。今回の休憩室の整備は、そうした視野と関係性を育むための第一歩となっています。